社会福祉法人経営と人財育成について

社会福祉法人経営と人財育成について

2017年度経営幹部懇話会 主催QCサークル近畿支部
場所:パナソニック企業年金基金
2017年12月6日
社会福祉法人ささゆり会
法人本部長 笹山 周作


ささゆり会の動画を観て頂きありがとうございました。次にパワーポイントで「社会福祉法人経営と人財育成について」説明します。現在社会福祉法人ささゆり会の法人本部長とN.P.O法人の理事長をしています笹山周作と申します。宜しくお願いします。
今から22年前に姫路市のJR姫路駅より北西約6㎞に位置する高級住宅街に土地を取得しそれを寄附し、父と母の相続財産を寄附して社会福祉法人を設立し、国の補助金と私の寄附金と借入金でサンライフ御立を開設しました。サンライフ御立に法人本部があります。

平成8年10月1日にサンライフ御立が開設となり、姫路事業所は現在建設中の西庄を含めますと7ヶ所となります。
特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、ヘルパーステーション、居宅介護支援事業所、地域包括支援センター等を運営しています。株式会社でも8ヶ所のグループホーム、有料老人ホームがあります。

神戸事業所は、神戸市東灘区魚崎に2ヶ所あり特別養護老人ホーム、ショートステイ、デイサービス、グループホーム、介護型ケアハウス、地域包括支援センター等を運営しています。特養があるサンライフ魚崎は、市の土地で市からの公募がありそれに申し込んで建設となりました。介護型ケアハウスは社会福祉法人で土地を取得して建設となりました。

次に、ささゆり会の基本理念とサービス十ヶ条です。
この基本理念は、法人設立の開設準備委員会で決めました。サービス十ヶ条を毎週月曜日に全員で唱和しています。そして、毎年一回全職員(正職員・パート職員)による一斉テストを行っています。内容は、基本理念、サービス十ヶ条、感染症、セクハラ、高齢者虐待、個人情報保護、身体拘束についての100問のテストを行い上位10名を表彰して掲示板に掲示しています。今年は先月27日と29日にテストを行いました。もちろん私も受けます。正職員で50点以下は追試です。

理事、評議員については、社会福祉法人は、地域との連携が最も大切と考え、設立時より地元の自治会長、民生児童委員に理事、評議員に就任して頂き、21年間良好な信頼関係を築いています。
理事長には、兵庫県社協の元事務局長で元大学教授を務められた方に就任して頂いております。わかりやすくいえば、社会福祉法人の理事会とは株式会社でいうところの取締役会に該当します。評議員会は株主総会に該当します。

地域との連携の大切さを書いています。以下は地域との行事等の内容を掲示しております。地域の方がほとんど利用される施設です。

サンライフ御立まつり、敬老会の風景を掲載しています。1Fのホールが広いので行事をホールで行うことができます。地域との連携や家族様との信頼関係を築くためにサンライフ御立は、現在大きな行事として、サンライフ御立まつり、敬老会、クリスマス会があります。以前はこれ以外にサンライフふれあい祭り、納涼祭があったのですが、3年前より職員不足となり取り止めとなりました。これらの行事には地域の高齢者、自治会役員、民生児童委員の方などを100名食事付で招待しています。その代わりといっては何ですが、職員の介護技術向上のため播磨介護技術競技大会をサンライフ御立で開催することになりました。この競技大会は播磨地域、神戸地域の介護施設から参加を募り実施しています。大変好評です。

次はクリスマス会です。12月のクリスマス会はボランティアの表彰、職員、非常勤職員の表彰と職員の出し物を観て頂いた後にボランティアさんの慰労会を兼ねた食事会を開催しています。
写真に掲載されているのが職員の時代劇風景です。

地元の中学生をトライやるウィークが始まってからずっと受け入れをしています。最初の時は20人~30人来ましたが、何もさせることがないので相談員が掃除をさせましたら、それを学校発行の冊子に掲載されたので掃除させることを止めました。最初の頃は介護施設はたいへん人気がありました。

介護実習の受け入れを高校、専門学校、看護専門学校等8校より年間約30名受け入れをしています。なかなか職員がつきっきりで介護のことを教えるのが大変ですが今も続けています。100才生き生き体操の場所貸しもデイサービス田寺で行っています。

10年以上前よりココセコムとして在宅高齢者に緊急通報システムの無料貸し出しを行っています。ささゆり会の職員が原則として駆けつけます。これも地域貢献事業の一つです。

●次は、現在建設中のサンライフ西庄です。来年4月オープンする西庄で、子供食堂を始めたいと考えています。20人前後の子供が食事ができるスペース、キッチン等を設けています。なんとか子供食堂を成功させたいと考えております。
●姫路駅の近くで保育、障害、介護のワンストップ無料相談サービスを検討しています。

ここからは、人財育成についてです。人財育成に何が必要かと申しますと、介護技術等の体で覚えていくものは、法人内研修や競技大会等に出場して体で覚えていき、知識等は外部研修等に参加したり、本を読んで自分の頭で考えていくことだと思います。
オールケアジャパンコンテストに参加している風景です。米子にあるこうほうえん主催のケアコンテストです。全国から集まって介護技術を競う介護技術競技大会に第2回から出場しています。最優秀賞も数回受賞しています。

米子のこうほうえんさんを参考にして当法人でも播磨介護技術競技大会を3年前より開催しました。今年は神戸、大阪も含めて45名の介護士の参加による競技大会でした。現場で困ったことについての問題を出題をしており、より実践性を高めています。新入職員の訓練の場になり好評を得ています。龍野北高校の生徒にもボランティアとして協力して頂いております。

QCサークルは12年前より職員の人財育成を主な目的として始めました。福祉業界は閉鎖的で自己満足に陥りがちなので、他の日本の産業界の人との交流を通じて職員が成長してもらえればと考え始めました。最初は、職員もたいへん緊張してあがっていましたが1年に1回や2回緊張の場面がないと人間は成長しないと私は思います。

QCサークルを行うことによって、介護に最も必要な職員のチームワークが高まり、ひいては介護の質の向上につながっています。私自身はQCサークル活動の知識も経験もなかったのですが、新聞や雑誌などでそういう改善活動があることは知っていました。世界規模で競い合う日本のメーカーの強さといえば、現場の力でしょう。それを支えている活動の1つであるQC活動を我々も活用し、介護の現場を強くしなければいけないと考えたわけです。それと職員が福祉の世界だけに閉じこもってしまうのは、よくない。製造業などの取組みにも触れて刺激を受け、もっともっと視野を広げてほしいと思っています。
 
右下の場面は、全体会議での発表風景です。このサークルは2016年2月10日、QCサークル近畿支部主催の『チャンピオン大会イン兵庫』にサンライフ御立のサークルが出場し、優秀賞に。ささゆり会のQCサークルはこうした外部の大会にしばしば出場し、県知事賞、支部長賞、奨励賞、感動賞などを受賞しています。
 
又、ささゆり会では毎月、すべての事業拠点をテレビ会議システム(ズーム)で結び、全体会議を実施。QCサークル活動の発表もこの場で毎年行われています。

ささゆり会のQCサークル活動は、毎年異なる3サークルが年1件のテーマで進めています。残念ながら組織全体の活動になっていないのが実情だといっていいと思います。なぜか・・・・・。そのあたりの難しさについて、サンライフ御立の生活相談員で法人内のQCサークル活動推進の相談員の植田智の意見として「ささゆり会では毎年のように新たな施設を開設し、事業拠点を拡大。新施設の様々な部門のリーダー役には、既存施設で成長した人たちを抜擢しています。そのため組織全体では人の異動が多く、全体でQCサークル活動に取り組んでほしいと願いながらも、現実的には3つの施設でそれぞれ1サークルずつ活動をするのが精いっぱい。それでもこのQCサークル活動でリー ダー役などを務めることによって能力を高め、次なる施設の管 理者を目指してほしいと考えているのです。」と述べています。
毎年4月からスタートさせる新たなQCサークルの立上げやメンバー編成は、現在はQCサークル委員会が主導して選定しています。通常、QCの経験者がリーダーとなり、ほかの初心者たちのメンバーに知識と経験を伝えながら、活動を展開しています。 必要に応じて植田がサポートする推進スタイルになっています。その主な原因は3交替制の勤務等により、全員が集まることが難しいのが実情です。なかなか職員がそろってQC活動に取り組んだりする機会が少ないのです。右側の写真がQCサークル取り組みの風景です。

19.2015 年の「ニュ ーロードサークル」の事例を紹介します。この時のサークルリーダーは、1年間QCの活動を体験していた男性介護士。そこにQC未経験の介護士、看護師、管理栄養士、生活相談員等が加わる8人編成の多職種混合サークルでした。テーマは、「褥瘡の減少」です。
 
「ニューロードサークル」の多職種による褥瘡検討会です。現在は施設内での定着のため「褥瘡委員会」が誕生し、活動を継続しています。
 
前田リーダーは「褥瘡が発生する要因はいくつもあるので、看護師や栄養士など多職種が一緒になって取り組むQCサークル活動でなければ、課題の改善は困難だったと思います。そして、褥瘡に関する知識やどれだけ辛いものなのかという危機意識を深めるうえでも、まずは全職員を対象に勉強会などを実施するようにしたんです。この特養の施設では職員を5班の体制にしていますが、褥瘡対策を進めるうえで特に有効だったのは班別対抗で競い合う方式の実践でした。これで全体の意識がさらに高まり、結果的には目標以上の成果につながりました」ということを述べています。

●法人内研修風景です。外部研修にできるだけ職員を行かせるようにしています。そして、そこで学んだことをTV会議システムのズームを通じて御立だけではなく全施設、全職員と共に勉強しています。そして研修に参加した職員は必ずレポートを提出し、自分の意見を述べなければなりません。私が時々コメントをします。そして又、ささゆり会職員約30人で書いた本を2冊上梓しています。短時間で仕上げることができたのも普段から社外研修へ行った時のレポートの提出が影響しているのではないかと思います。
●そして、右側の写真が資格取得の勉強会風景です。資格取得もサポートしています。法人でオリジナルテキストを作って配布したり、問題を毎週配布したりしています。職員1名を資格取得のため配置しております。


キャリアパス制度です。どうしても福祉関係の人は視野が狭くなるので、介護分野だけでなく労働基準法、会計、マネージメント、マーケティング等を勉強するようにしています。私も教えますが、先輩職員が後輩に教えるようにしています。この研修会で使用するテキストは私が選んだものを分野ごとに数十冊買って教材として使用しています。午後2時~4時の仕事時間の中で行っています。

私は介護の質についての評価は、70%は数値化ができると考えています。食事、入浴、看取り、褥瘡、身体拘束等の数字をホームページに掲載しています。介護業界はあまり数字を好みませんが、私はある程度介護の質は数字で表せることができると考えています。そして全体会議で発表して職員と共有しています。

昨年8月よりベトナムからE.P.A(経済連携協定)による公益社団法人国際厚生事業団を通じて13名がささゆり会に来ています。
これはベトナムでの面接風景です。まさか私がベトナムへ求人に行くことがあるとは夢にも思ってもいませんでしたが、行かなければならないようになりました。この人たちの給料は日本人と同額です。日本語能力検定N3を合格して日本へ来ますが、来日後も日本語のサポート、介護福祉士の国家試験のサポートを行っています。4年後に介護福祉士の国家試験に合格しなければ帰国しなければなりません。もちろん日本人と同じテスト問題です。なかなか厳しい現実です。

給料や福利厚生について介護業界は給料が安いとマスコミ等で言われていますが、私は決して安いとは思っておりません。もちろん、安い法人もあるかもしれませんが、私がお世話になっている社会保険労務士事務所の先生は一般の中小企業と同等かそれ以上と言われています。
●今年7月より企業型確定拠出年金を始めました。人間ドッグについても40才以上70才までの偶数年の人は、50,000円の助成金が支給されます。
15年前より保育料の1/2を法人が負担しております。介護士から看護師になる制度も設けており、休職扱いで授業料等全額法人負担で、現在姫路赤十字看護学校に1名在籍しております。

介護の将来について、私が社会福祉法人を設立して15年間は介護業界において介護保険制度もでき順風満帆の時代でした。しかし、6年~7年前よりあるTV局の報道をきっかけに新聞等のマスコミで介護業界は3Kや4Kと言われ、給料も安く、結婚もできないとの報道が多数ありました。それによって、介護業界で働きたいと希望する学生は親に反対され、親戚や友達にも反対され、介護業界に就職する人が大変少なくなりました。介護専門学校の学生も定員の50%の就学しかなく、その50%の半分しか介護業界で働きません。
国は、介護士の給料を上げれば介護業界で働く人が増えると安易に考えていますが、それは間違いです。介護業界で働いている人はもちろんお金のことも大切ですが、それ以上に人の介護をするのが好きである。そこにやりがいや生きがいを感じて働いています。そのことを国は分かっていません。
今、国は働き方改革で残業をなくしたり、夫婦2人が正社員で働くことができたりする方向で進めていますが、子供と親のダブル介護や残業の多い会社で夫婦2人が正社員で働いてはたして自分の親が重度の認知症や寝たきりになった時に在宅で親の介護をすることができるのでしょうか。それはできません。それができないので会社を辞めざるを得ません。
今現在、団塊の世代が68才~70才ぐらいです。あと10年~15年先には、介護を必要となる人がたくさん増えてきます。2025年には厚生労働省の推計で約38万人の介護職が不足すると発表されています。今でも人手不足で困っている現状であるのに、これから将来どうなるのでしょうか。職員がいない状態で、今後新しく特別養護老人ホーム等の介護施設を経営者は造ったりしません。介護施設を造るか造らないかは経営者の判断です。そして今現在、国は地域包括ケアと言って地域のお年寄りの人の介護を地域のケアで行おうと考えていますが、地域包括ケアの中心になるのはヘルパーです。そのヘルパーになる人がいません。

そうしますと特別養護老人ホームで働く人はいない、ホームヘルパーはいない、誰も介護で働く人がいない現状で外国人に来てもらって介護をしてもらうのでしょうか。その外国人も入国するための高いハードルがたくさんあります。そうなると最後は、日本における老人介護はどうなるかと申しますと、あなたの親はあなたが介護するということです。ロボットでは入浴排泄等の介護はできません。物は自国になければ輸入することができますが、介護については500万年前より子供が親の面倒を見ているということです。介護業界において人財育成が最も大切だと私はいつも思っていますが、介護をする人がいない現状は、将来介護難民が多数発生する大変厳しい将来であると考えます。介護業界の悪い一面のみを報道するだけではなく、若い職員が一生懸命頑張って介護をしているところをぜひマスコミ等で取り上げて頂きたいと考えています。そうしないと10年先15年先が思いやられます。


ご清聴ありがとうございました。